腎の病症
腎の病症
腎の生理作用は蔵精、水液代謝、生殖、成長発育、納気をつかさどる作用があり、生命力の源である元気をもたらします。
腎が病むと精の外泄、水液代謝の失調、発育の遅れ、生殖機能の低下による不妊症、陽萎、呼吸困難などがおこります。
腎の病の原因は先天の気の不足、過度の房事、栄養の吸収不良、高齢、慢性疾患などがあります。
腎には「志」を蔵すると同時に、脳、髄、骨を養っているので、腎が病むと健忘症、腰痛、下肢に力が入らないなどの症状があらわれます。
さらに水液代謝の機能が失調すると尿の出が悪くなり、浮腫となります。
また納気作用が失調すると気が上に偏り、下に不足する病態になります。
他にも腎は耳、髪、歯、二陰とも関係があるので、腎が病むとこれらにも異常があらわれます。
腎精の不足
腎精が不足すると発育が悪くなり、性器の成熟および性機能に障害があらわれたり、老化が早まったりします。
腎精の不足にはそれがおこる時期により違いがあらわれます。
乳児期、幼児期であれば発育に影響して五遅、五軟がおこり、思春期では性器の成熟に影響をあたえます。
壮年期では性機能に影響を与え陽萎や不妊症がおこります。
また老年期では、腰や膝の軟弱化、歩行障害、難聴、老眼などの老化が早まります。
主な症状は発育の遅れ、性欲減退、早老化、耳鳴り、難聴、めまい、歯の動揺、健忘などです。
腎陰虚
腎の陰液が不足した状態であるが、陰虚としての症状より虚火の症状が多くあらわれます。
原因としては先天の不足、房事過多、過度の出血や脱液、驚きや恐怖などです。
主な症状として腰や膝の軟弱化、めまい、耳鳴り、五心煩熱があります。
腎陰は全身の臓腑、組織などの陰液の根源であるため、腎陰が不足すると多くの臓腑、組織に影響をあたえます。
そのため他の臓腑として合併症として、不眠、多夢、咽頭の乾き、便秘などを伴いやすく、また陰虚の症状である五心煩熱、盗汗、午後の潮熱なども生じます。
腎陽虚
陽虚であるため温煦作用、気化作用の低下があらわれ、精神不振、性機能の減退、生育能力の低下がおこります。
原因として老化による腎気虚、房事過多、先天の不足などがあり、他の臓の陽虚から波及するもの、腎気虚や腎精の不足から進行しておこることもあります。
主な症状は腰や膝の軟弱化と冷え、四肢の冷え、寒がり、下痢、不妊症です。
下痢は温煦作用の低下のため脾の運化作用が低下することでおこります。
また温煦作用の低下のため水をつかさどる機能が低下すると浮腫、尿量の減少がおこります。
腎気虚
腎の機能が低下した状態で腎気の固摂機能が低下しておこる腎気不固と腎気の納気機能がていかしておこる腎不納気があります。
腎気虚の原因として先天の不足、労倦内傷、老化、慢性の気虚などがあります。
腎気不固
腎気虚のため腎の封蔵機能が低下した病症で遺精、早漏、遺尿、小便失禁、流産しやすい、帯下などがおこります。
これらは腎気虚による腰や膝の軟弱化、耳鳴り、難聴をともないやすくなっています。
腎不納気
腎の納気機能が低下し、喘息や呼吸困難、息切れなどがあらわれます。