肝の病症

肝の生理作用として「疏泄をつかさどる」、「蔵血をつかさどる」があります。
そのため疏泄が悪くなると気機の調節、脾胃の運化機能の調節、情動の調節などが障害されます。
また、蔵血が悪くなると肝の支配する目や筋の異常となってあらわれます。
目の症状としては視力低下、眼精疲労などがあり、筋の症状としては筋肉の引きつれ、萎縮などがあります。

肝気鬱滞

肝の疏泄機能が失調して起こる病症で、精神的なストレスを受けたり長期的に気分がふさがっていると起こります。
この病症は気鬱や気滞から精神状態に影響しさらに肝気鬱滞を起こすため悪循環となりやすい。
主な症状は精神抑鬱、怒りっぽい、胸悶、胸脇苦満、梅核気(のどのつかえ)があります。

肝火亢進

肝気の鬱滞が進行して化火し、その火が上逆しておこる病症です。
また、お酒やたばこ、辛い飲食物の取りすぎでおこるときもあります。
主な症状は頭痛、目の充血、いらいら、怒りっぽいです。
表裏関係の胆に火が移ると耳鳴り、口苦などの症状もあらわれることもあります。
また心神に影響すると心煩、不眠、多夢などの症状となります。

肝陰虚

肝の陰液が不足した状態なので虚熱となります。
原因として腎陰の不足、熱による肝陰の損傷、温熱病による陰液の損傷などがあります。
主な症状は脇痛、手足のひきつり、目の乾燥、さらに陰虚による五心煩熱、盗汗、口や咽頭の乾きなどがあります。

肝陽の亢進

肝の陰虚陽亢としてあらわれることがありますが、肝鬱、肝火から進行しておこることもあります。
また、肝腎がともに陰虚となり肝陽を制御できないと肝陽が亢進します。
本病症は陽の亢進であるため実証のようにみえるが、本質は陰虚です。
陰虚の症状のほかに、めまい、頭痛、耳鳴り、目の充血、いらいら、怒りっぽい、腰や膝がだるく力がはいらないなどの症状があらわれます。

肝血虚

原因として血の生成不足、過度の出血、慢性病による肝血の消耗などがあります。
肝の蔵血作用には血液の貯蔵と血量の調節の作用があるため、各臓腑、組織、器官に影響を与えます。
そのなかでも筋、目、衝任二脈、心神は肝血と密接な関係です。
主な症状は目の乾き、かすみ、脇部の隠痛、顔色萎黄、唇や舌質の色は淡白です。
また、不眠、多夢などの症状の他、四肢のふるえ、筋肉の引きつりがおこるものもあります。
月経の経血量はすくなく、経質は淡となり、閉経となるときもあります。

肝風

肝腎の極度の陰虚により陽を制御できない場合、また血の不足により筋の栄養不良、過度の肝陽の亢進などによりおこります。
主な症状はめまい、しびれ、ふるえ、筋肉のひきつり、半身不随となることもあります。