疼痛

痛みは臨床上よくみられる自覚症状であり、さまざまな疾患であらわれます。
経絡走行上にある痛みは、経絡病症であることが多くあります。
その場合は走行している経絡の異常としてとらえますが、なかには臓腑病症によるものもあります。
痛みについてはその部位、性質および時間などをたずねます。

痛みの部位

身体の各部位はすべて一定の臓腑や経絡と連絡しているので、疼痛部位を知ることは病変のある臓腑経絡を知るために意義があります。

頭痛
六淫の邪および痰濁や瘀血による頭痛は実証です。
また気、血、精などの不足により起こる頭痛は虚証です。
頭痛の部位に基づく頭痛の分類は次の通りです。
太陽経頭痛
後頭部から後背部にかけて痛む
陽明経頭痛
前額部あるいは眉間にかけて痛む
少陽経頭痛
両側または一側の側頭部が痛む
少陽経頭痛
両側または一側の側頭部が痛む
厥陰経頭痛
頭頂部が痛む
胸痛
胸には心と肺がありますので、心や肺が病むと胸痛が起こりやすくなります。
痰濁によるものは胸悶、咳嗽をともないやすく、瘀血によるものは胸悶、心悸をともないやすく、また陽虚によるものは四肢の冷え、自汗、顔色蒼白などをともないやすいです。
脇痛
脇部には肝胆の二経が分布しています。
したがって肋間神経痛など、この部位の病変は肝胆の病変と関係が密接です。
気滞、血瘀、湿熱、懸飲などにより、脇痛がおこります。
腹痛
腹部は大腹、小腹、少腹の三つに分類されます。
臍より上部を大腹と呼び、脾胃と関係があります。
臍より下部を小腹と呼び、腎、膀胱、大腸、小腸および子宮と関係があります。
また小腹部の両側を少腹と呼び、この部位は足厥陰肝経と関係が密接です。
これらの疼痛の部位を確認することにより、関連する臓腑を推察することができます。
腹痛には虚証と実証があり、実証には気滞、血瘀、食滞などによるものがあります。
虚証には気虚、血虚、陽虚などによるものがあります。
腰痛
腰は腎の府であり、腰痛は腎の病変によくみられます。
風・寒・湿邪が経絡に阻滞して起こる腰痛、瘀血が経絡に阻滞して起こる腰痛は実証です。
腎精の不足、あるいは腎の陰陽の虚損により起こる腰痛は虚証です。
四肢痛
四肢の疼痛は、経絡や関節、肌肉が風・寒・湿などの邪に襲われ、気血の流れが悪くなるとおこります。
湿熱が経絡の気血の流れを悪くしておこるものもあります。
脾胃が虚して、水穀の精微が四肢をうまく栄養できないために起こるものもあります。
足のかかとの痛みは腎虚のことが多いです。

痛みの性質

痛みをひき起こす病因や病症が異なると、疼痛の性質も異なります。
したがって痛みの性質を知っていれば、痛みの原因と病症を知るのに役にたちます。

痛みの喜悪

拒按
疼痛部位に触れたり、按圧すると疼痛が増強することです。
実証でみられます。
喜按
疼痛部位を按圧すると、疼痛が軽減または消失することです。
虚証でみられます。
喜温
温めると疼痛が軽減することです。
寒証でみられます。
喜冷
冷やすと疼痛が軽減することです。
熱証でみられます。
名称
痛み方
よくみられる病症
脹痛
張った感じ、膨満感をともなう痛み
気滞
刺痛
錘で刺したような痛み
血瘀
酸痛
だるい痛み
虚証、湿証
重痛
重く感じられて痛む
湿証
冷痛
冷えをともなう痛み
寒証(実寒、虚寒)
灼痛
灼熱感をともなう痛み
熱証(実熱、虚熱)
絞痛
絞扼痛、疝痛
寒証、血瘀、結石
隠痛
がまんできる持続性の鈍痛
虚証
掣痛
ひっぱらるような痛み
肝の病証
空痛
疼痛部位に空虚感をともなうもの
気血精髄の不足